競馬でデータ分析をしていると、
ついこういう方向に走りがちではないでしょうか。
- 条件を細かく切り刻んで「勝てるパターン」だけを抽出する
- 不安要素を徹底的に排除して、“完璧な条件”を作ろうとする
- 「この条件に当てはまるときだけ買えばいい」という魔法のフィルタを探す
気持ちはよく分かります。
私も一時期、ガチガチに絞り込んだロジックこそ正義だと思っていました。
しかし、いろいろ試行錯誤した結果、今はこう考えています。
競馬のデータ分析は、ガチガチに絞り込むよりも、
ある程度の“冗長性”を残しておいたほうが安定する。
この記事では、
- なぜ「絞り込みすぎ」が危険なのか
- データ分析における「冗長性」とは何か
- 実際にどのあたりに“余白”を残しておくべきか
について整理してみたいと思います。
ガチガチに絞り込むと、一見「最強ロジック」ができてしまう
まず、よくある流れから振り返ります。
手元に数年分のレースデータがあったとして:
- いろいろ条件を組み合わせてフィルタをかける
- 「回収率120%」「的中率30%」みたいなゾーンが見つかる
- さらに条件を細かくして数字を上げにいく
- 「お、ここだけ切り出すと回収率150%だぞ!」となる
この瞬間、めちゃくちゃ気持ちがいいです。
「ついに見つけた。これが俺の必勝パターンだ」
…と言いたくなります。
ですが、そのロジックを未来のデータに適用すると、なぜかこうなります。
- サンプルが全然出てこない
- たまに出ても成績が安定しない
- 気付いたら「条件を作った期間だけ強かったロジック」になっている
ここに、“絞り込みすぎ”の罠があります。
データ分析でハマりがちな2つの落とし穴
競馬に限らず、データ分析でよく出てくる落とし穴は次の2つです。
- サンプル不足
- 過学習(過度なフィット)
① サンプル不足:母数が少なすぎて再現性がない
条件を細かくしすぎると、あっという間に件数が減ります。
- 「3歳未勝利+芝1600+右回り+外枠+差し」
- 「ダート1700+古馬1勝クラス+関西騎手+前走3〜5着」
こんな感じで条件を切り刻んでいくと、
- 3年分使っても、該当レースが数十件
- その中でたまたま万馬券が1本当たっているおかげで、回収率だけ高く見える
という「見せかけの優秀ロジック」が簡単に出来上がります。
母数が少ない条件で回収率だけ見ても、
「たまたま運が良かったのか」
「本当にロジックが強いのか」
の区別がつきません。
② 過学習:過去には強いけど未来には弱いロジック
もう一つの問題が 過学習(オーバーフィット) です。
- 過去データにピタッと合わせるように条件を調整する
- 成績の悪かった期間・パターンだけ都合よく除外する
- 結果として「その期間を説明するためだけのロジック」になる
こうなると、
- 過去データ上では最強に見える
- しかし、未来では全然機能しない
という“幻の黄金ルール”が量産されます。
過去にフィットしすぎたロジックは、
ちょっとした環境変化ですぐ壊れる のが特徴です。
冗長性とは何か?「余白」と「逃げ道」を残すという発想
では、ここでいう「冗長性」とは何でしょうか。
ざっくり言えば、
ロジックを成立させる条件やパターンに、
あえて“幅”と“ダブり”を残しておくこと
だと考えています。
もう少し分解すると、冗長性にはこんな意味があります。
- 多少の環境変化(馬場傾向・騎手事情・クラス構成の変化)に耐えられる
- 特定の1パターンに依存しすぎない
- 「別ルートでも同じ結論にたどり着ける」状態を作る
簡単に言うと、
「最強の1本」より「そこそこ強い3本」を束ねるイメージ
です。
冗長性を残す具体例①:条件を「切りすぎない」
まず、一番分かりやすいのは 条件設定の“刻み方” です。
悪い例:条件を細切れにしすぎる
- 距離:1800mだけ
- 馬場:良馬場限定
- コース:右回りだけ
- 脚質:先行馬のみ
- さらに「騎手」「枠順」「前走の着順」まで細かく指定
こうすると、
- サンプル数が一気に減る
- 条件のどれか一つがズレただけで、「買えるレースゼロ」になる
という“ガラス細工ロジック”になりがちです。
良い例:ざっくりとした「帯域」で見る
- 距離は「中距離(1800〜2200)」としてまとめる
- 馬場は「極端な不良だけ除く」くらいにとどめる
- コースも「小回り」「広いコース」くらいの粒度で見る
- 脚質も「前に行ける組」「後ろからの組」くらいの区分
このくらいの“帯域”で条件を切っておくと、
- サンプル数が確保しやすい
- 年度や場替わりで多少条件が変わっても、ロジックが生き残りやすい
というメリットがあります。
「ピンポイントで刺さる条件」ではなく、
「多少ブレても許容できる帯域条件」を作ること。
これが、冗長性を残す第一歩だと思います。
冗長性を残す具体例②:ファクターを一つに絞らない
次に大事なのが、
「一つの指標に全ツッパしない」 ということです。
危険パターン:単一指標への依存
- 自分の指数1位だけに全てを賭ける
- タイム指数だけで評価してしまう
- 血統だけ、ラップだけ、調教だけ…と単独ファクターに頼る
こうすると、その指標がハマらない期間に一気に崩れます。
- 馬場傾向の変化
- コース改修
- 騎手事情の変化
など、指標の前提が崩れると一発アウトです。
冗長性のあるファクター構成
一方で、例えばこんなイメージです。
- 自作指数(総合力)
- メンバーレベル(相手関係)
- 脚質・位置取り(展開との相性)
この3つを「並列の軸」として使い、
- 3つすべてが◎なら強く買う
- 2つ◎で1つ〇なら通常通り
- 1つしか◎がないなら慎重に、など
複数のファクターが重なるところを厚くする 発想です。
こうしておくと、
- どれか1つの指標が不調でも、他でカバーできる
- 「複数の視点で見ても買える馬」に自然と絞られる
という、冗長性の効いたロジックになります。
冗長性を残す具体例③:買い方の“打ち手”を一本化しない
冗長性は、ロジックだけでなく**買い方(ベット戦略)**にも必要だと思っています。
単勝だけに全振りするリスク
たしかに、理論上は単勝が最強です。
しかし、
- 単勝だけで運用すると、どうしても連敗がキツくなる
- メンタルが削られ、ロジック修正ではなく「賭け方の暴走」に走りやすい
という現実的な問題があります。
冗長な“打ち手”を用意しておく
例えば、
- 基本線は単勝
- 期待値はそこまで高くないが「軸の信頼度」が高いときは複勝もセット
- 条件が揃ったときだけ、馬連/ワイドなどを絡める
など、
「期待値の源泉は単勝に置きつつ、
資金曲線をなだらかにするための冗長な打ち手を用意しておく」
こういう設計も、広い意味での冗長性だと思います。
「ガチガチに削ぎ落とした理論」ほど壊れやすい
ここまでをまとめると、
私が言いたいのは次のようなことです。
- 条件を削ぎ落としすぎたロジックは、サンプル不足と過学習の罠にハマりやすい
- 「ある期間」「ある競馬場」「ある傾向」にだけフィットしてしまうと、その前提が崩れた瞬間にロジックも崩壊する
- 一方で、多少のブレを許容する“冗長なロジック”は、環境変化に対して「しなやか」に生き残りやすい
競馬のデータ分析は、
“余計なものを全部削ぎ落とす作業” というより、
“削りすぎないための線引きを決める作業” に近い。
と今は考えています。
まとめ:最強の一本勝ちより、「まあまあ強い複線」を束ねる
最後に、この記事のポイントを整理します。
- ガチガチに条件を絞り込むと、
- サンプルが不足して再現性が疑わしくなる
- 過去にだけ強い「過学習ロジック」になりやすい
- 冗長性とは、
- 条件に“幅”を持たせること
- ファクターを一つに絞らず、複数軸で判断すること
- 買い方にも複数の打ち手を残しておくこと
- 「最強の一点突破ロジック」を目指すより、
「そこそこ強いロジックを複数束ねて全体の安定性を上げる」 発想のほうが、長期的な回収率は安定しやすい
次にデータ分析をするとき、
もし「条件を足せば足すほど数字が良くなる」ように見えたら、
一度こう自問してみてください。
「これは本当にロジックが強くなっているのか?
それとも単に“過去データに合わせ込んでいるだけ”じゃないのか?」
そしてもうひとつ。
「このロジックは、何か一つ前提が変わったときに、
それでも生き残れるだけの“冗長性”があるか?」
この問いを忘れずに、
“削りすぎないデータ分析” を意識していくことが、
競馬で長く勝ち続けるための土台になるのではないかと思います。

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