「複勝は単勝のリスクヘッジになるのか?」
競馬をある程度やっている人なら、一度はこう考えたことがあると思います。
「本命の単勝を買うけど、不安だから複勝も押さえておくか…」
「単複で持っておけば、どっちかで何とかなるでしょ」
直感的には「当たりやすい複勝で単勝のリスクを薄める」というイメージですが、
本当に“ヘッジ”になっているのか?
冷静に計算してみると、けっこう怪しい場面も多いです。
この記事では、
- そもそも「リスクヘッジ」とは何か
- 単勝+複勝の組み合わせは、どんな時にヘッジとして機能するのか
- 「やってはいけない単複買い」と「やる価値がある単複買い」
を、数字ベースで整理していきます。
1. そもそも「リスクヘッジ」とは?
まず言葉の整理から。
リスクヘッジとは本来、
大きな損失が出るパターンを、別のポジションで“相殺”してダメージを抑えること
です。
株や為替だと、
- A社の株を買いつつ、指数先物を売っておく
- ドル買いポジションを持ちながら、オプションで急落に備える
みたいな形ですね。
この発想を競馬に持ち込むと、
「単勝が飛んだときのダメージを、複勝で軽くできるか?」
という問いになります。
ただしここで重要なのが、
- 期待値(EV)はどう変わるのか?
- 最大ドローダウン(連敗時の資金減少)はどう変わるのか?
この2点です。
「当たりやすいから安心感がある」だけでは、
ヘッジというより ただの気休め になっている可能性があります。
2. 単勝+複勝を“同じ馬”に買う場合
まず一番よくあるパターンから。
- A馬の単勝 5倍 に 1,000円
- 同じA馬の複勝 2倍 に 1,000円
合計2,000円ベットしたとします。
2-1. パターン分け
A馬の着順ごとに結果を分けると:
- 1着のとき
- 単勝:1,000円 × 5倍 = 5,000円
- 複勝:1,000円 × 2倍 = 2,000円
- 合計払戻:7,000円
→ 収支:+5,000円
- 2〜3着のとき(複勝圏内)
- 単勝:ハズレ 0円
- 複勝:1,000円 × 2倍 = 2,000円
- 合計払戻:2,000円
→ 収支:±0円(トントン)
- 4着以下のとき
- 単勝:0円
- 複勝:0円
→ 収支:−2,000円
これだけ見ると、
「1着なら大きく勝てるし、2〜3着ならチャラ、4着以下で負けなら悪くないじゃん」
と感じるかもしれません。
でも、ここで本気で考えるべきは 期待値 です。
3. 単複買いの期待値をちゃんと計算する
仮に自分の感覚・指数などから、
- A馬が 1着になる確率:20%
- 2〜3着に入る確率:30%(=1〜3着は合計50%)
- 4着以下:50%
と見積もったとします。
3-1. 「単勝オンリー」の期待値
単勝5倍に1,000円だけ賭けるときの期待値は:
- 当たる確率:20%
- 当たったときの払戻:5,000円
- 外れたとき:0円
→ 期待値 = 0.2 × 5,000円 + 0.8 × 0円 = 1,000円
投資額は1,000円なので、
- 期待値ベースの回収率:1,000 ÷ 1,000 = 100%
この時点では「やや旨い/やや辛い」は別として、フラットと考えておきます。
3-2. 「単複1,000円ずつ」の期待値
さきほどのパターン表を使って計算します。
- 1着(20%) → 収支+5,000円
- 2〜3着(30%) → 収支±0円
- 4着以下(50%) → 収支−2,000円
期待値は:
- 0.2 × (+5,000円) + 0.3 × (0円) + 0.5 × (−2,000円)
= 1,000円 − 1,000円 = 0円
投資額は2,000円なので、
- 回収率:0 ÷ 2,000 = 0%(=EVマイナス)
この例だと、
単勝オンリーならEVは±ゼロ(100%)だったのに、単複にした瞬間にEVがマイナスに落ちている わけです。
なぜか?
複勝で「保険をかけた」つもりが、
「オッズの安い券種にお金を分散させて、全体EVを削っている」
だけになっているからです。
4. それでも「ヘッジ」と呼べる場合はある
とはいえ、単複買いがすべて悪いわけでもありません。
4-1. ドローダウンを抑えたい場合
- 単勝オンリー:的中は少ないが、当たったときのリターンが大きい
- 単複:収支トントンのレース(2〜3着)が増えるので、資金カーブは滑らかになる
この意味では、
「資金を大きく減らすリスク」を抑える、という意味でのヘッジ効果はある
と言えます。
ただしその代わり、
- 長期の期待値(伸び率)は下がりやすい
というトレードオフを受け入れる必要があります。
4-2. 自分の「的中モデル」が“2〜3着寄り”の場合
もう一つは、
- 「勝ち切れないけど、好走はしやすいタイプ」を狙うモデル
- 「脚質・枠順的に、勝ち切るイメージは薄いが、掲示板内には来そう」
といったケースです。
この場合、
- 単勝よりも複勝・ワイドの方が本質的に向いている
- その上で、オッズ次第で単勝を“オマケ”に足す という発想はありえます
このときは、
「複勝(本命)の期待値が十分プラスで、
単勝は“ボーナスの宝くじ”的に少額乗せる」
という構造なので、複勝が主役です。
この場合、「複勝が単勝のヘッジ」というより、
単勝が複勝のレバレッジ
に近いイメージです。
5. 真のヘッジを考えるなら「別の馬」「別の券種」も検討すべき
「ヘッジ」という言葉を厳密に持ち込むなら、
同じ馬に単勝と複勝を買うよりも、
- 別の馬
- 別の券種
の組み合わせを考える方が、理屈としてはきれいです。
5-1. 別の馬を絡めたヘッジ例(イメージ)
- A馬:本命(軸)
- 勝つ確率は高いが、人気を背負っている
- B馬:穴
- 勝つ確率は低いが、オッズ妙味がある
ここで、
- A馬の複勝
- B馬の単勝
という組み合わせを取ると、
- Aが飛んだときの一部を、Bのホームランでカバー
- Aが堅実に3着内なら、Bが飛んでも複勝である程度回収
…といった「相関の取り方」もあります。
もちろん、これも期待値ベースで要検証ですが、
ポジションの方向性を分散させる
という意味では、こちらの方がヘッジっぽい動きになります。
6. 「心理的ヘッジ」としての複勝
現実的には、多くの人が複勝を買う理由はここだと思います。
- 全ハズレの日が続くとメンタルが折れる
- 何レースかに一回は「当たった!」という感覚が欲しい
- 「今日は全敗…」を避けたい
この視点から見ると、
複勝は“お財布のヘッジ”というより、“メンタルのヘッジ”
として機能している部分が大きいです。
これは決して悪いことではなくて、
- メンタルが崩壊 → ベット額無茶上げ・レース乱打 → 退場
を防ぐための「安全装置」として、複勝を使う戦略もあります。
ただしその場合でも、
「精神安定剤として複勝を使っている」
と自覚しておくこと
が大事です。
7. 結論:複勝は単勝の“リスクヘッジ”足りえるのか?
ここまでをまとめると、
✕ 間違ったイメージ
- 「単勝が不安だから複勝も足せば、トータルで得をするはず」
- 「単複にしておけば、とりあえず賢い買い方」
こういう感覚で単複を買うと、
多くの場合、期待値を下げるだけ になりやすい
です。
△ 条件付きで“ヘッジ”と呼べるケース
- 複勝込みにすることで、資金カーブのブレを小さくしたい(ドローダウン抑制)
- 複勝側にしっかりとEVがあり、単勝はオマケ的に少額(メインは複勝)
- 別馬や別券種を組み合わせて、ポジションの方向性を分散している
このあたりなら、
「リスクとリターンのバランスを調整する」という意味で
“ヘッジ的に使っている”と言ってよい
と思います。
○ 結局は「EV」と「資金カーブ」の問題
最終的に、考えるべきポイントはシンプルです。
- ① 単勝だけのときのEVとドローダウン
- ② 単勝+複勝にしたときのEVとドローダウン
この ①と②をちゃんと数字で比較して、どちらが自分のスタイルに合うか を決める。
「安心できるから」「なんとなく守りになる気がするから」ではなく、
“複勝を足した結果、トータルの戦略としてどう変わるのか?” を本気で考える
ここまで踏み込んで初めて、
「複勝は単勝のリスクヘッジになるのか?」
という問いに、自分なりの答えが出せるようになります。
おわりに
複勝は便利な券種です。
当たりやすく、資金も減りにくく、精神衛生上も優しい。
だからこそ、
「単勝が不安だから、とりあえず複勝も」
という安易な使い方をすると、
いつの間にか “勝てないけど大負けもしない人” に落ち着いてしまいがちです。
- 単勝でどれだけ攻めるのか
- 複勝をどの程度まで“保険”として許容するのか
- そもそも自分の理論に複勝は本当に必要なのか
一度、自分の馬券履歴と数字を見ながら、
タイトル通り 「複勝は単勝のリスクヘッジになるのかを本気で考える」 時間を取ってみると、
あなたの馬券スタイルが一段クリアに見えてくるはずです。

コメント