競馬である程度理論を組んで、データを集めて、検証して…。
ここまで真面目にやっていると、ついこう思いたくなります。
「プロセスは合っている。
今はたまたま結果がついてきていないだけだ。」
もちろん、本当にそういうケースもあります。
ただ、その一方でこう自問してみる必要もあります。
「それ、本当に“正しいプロセス”ですか?
ただの“過学習(オーバーフィット)”ではないですか?」
この記事では、
- 過学習(オーバーフィット)とは何か
- 競馬のどんな場面で起きているのか
- 「プロセスが正しい」という思い込みの危険さ
- 過学習を避けるために、実務レベルで何をすべきか
を、競馬プレイヤー目線で整理してみたいと思います。
過学習(オーバーフィット)とは何か?
本来「過学習」は、機械学習の文脈でよく出てくる言葉です。
ざっくり言うと、
「たまたまのデータに合わせ込みすぎて、
本質的なパターンではなく “ノイズ” まで学習してしまうこと」
です。
機械学習の例でいうと:
- 学習データでは正解率99%
- でも新しいデータに適用すると正解率50%にガタ落ち
みたいな現象が典型です。
要するに、
- 過去のデータには気持ち悪いくらいピッタリ合っているのに
- 未来に対してはからっきし弱いロジック
になってしまっている状態です。
これ、競馬のデータ分析・理論づくりでも普通に起きます。
競馬における「過学習」のよくあるパターン
競馬で過学習が起きる流れは、だいたいこんな感じです。
パターン①:条件を細かく切り刻みすぎる
- 過去3年分のデータを集める
- いろいろ条件で絞ってみる
- 「ここだけ見れば回収率150%!」というゾーンを見つける
- うれしくなって、さらに条件を追加して数字を上げにいく
結果として、
- 該当レースが数十件しかない
- たまたま万馬券が1〜2本当たっていて、全体の数字を押し上げている
- 「過去だけ最強ロジック」の完成
というパターンです。
パターン②:「上手くいった期間」だけを切り出して検証する
- 自分が調子の良かった1年分だけを分析
- その期間だけに合うルールを組んで満足する
- その前後の期間では全く機能していないことには目を向けない
つまり、
「勝てていた部分だけを切り出して、“俺のロジックは正しい”と納得する」
という自己満足ループです。
パターン③:外れたあとに“都合のいいルール修正”を繰り返す
- 外れ方が気に入らないレースが出る
- 「このパターンだけ除外すれば成績が上がる」と条件を追加
- また外れる → また条件を足す → ロジックがどんどん複雑化
気付けば、
- 自分でも説明しきれない条件だらけ
- 過去データに対してだけ妙に強いが、リアルタイムでは全然当たらない
という「お化けロジック」が出来上がっていきます。
「プロセスは正しい」という言葉が危険になる瞬間
ここで問題になるのが、
「プロセスは正しいから、結果が出てなくても気にしない」
という考え方です。
本当にプロセスが正しければ、
この姿勢はむしろ大事です。
短期的なブレに耐えるためのメンタルとして必要です。
しかし、ここに “過学習ロジック” が混ざってくると話が変わります。
ケース1:過学習ロジックなのに「プロセス信仰」で突っ走る
- 実はたまたま数字がよかっただけの条件
- 母数も少なく、検証も甘いロジック
これを、
「苦労して作ったロジックだから正しいはずだ」
と信じ込んでしまうと、
- 成績が崩れても、「一時的な不調」として処理してしまう
- 検証の仕方を見直すことなく、資金だけ削られていく
という地獄ループに入りやすくなります。
ケース2:ロジック側に問題があるのに、メンタル論で片付ける
- データの切り方に明らかに無理がある
- 過去検証にバイアスが乗りまくっている
それでも、
「結果に一喜一憂するな」
「プロセスを信じて愚直に打ち続けろ」
という言葉だけを都合よく使ってしまうと、
- そもそものプロセス精度を疑う視点が消える
- 「ロジックが弱い」のに「打ち続けるべき」と自分を洗脳する
という、かなり危ない状態になります。
自分のロジックが「過学習っぽい」ときのサイン
では、自分の理論が過学習に陥っているかどうかを疑うための目安を、いくつか挙げてみます。
サイン①:条件が細かすぎて、人に説明できない
- 「こういうときは買うけど、こういう例外は除外」
- その例外条件がどんどん増えている
- 自分でもロジック全体を一文で説明できない
こういうときは、ほぼ間違いなく “ノイズへの合わせ込み” が混じっています。
サイン②:検証に使った期間だけ数字が異常にいい
- 2019〜2021年は回収率120%
- でも 2016〜2018年に当てはめると90%
- 2022年以降も90〜100%止まり
こういった「特定の期間だけ光るロジック」は、
その期間の馬場傾向や騎手事情にたまたまハマっただけ、という可能性が高いです。
サイン③:サンプル数が少ないのに、回収率だけ派手
- 該当件数:30件
- うち1回の10万馬券で回収率150%
- それを見て「この条件は激アツ!」と言い切っている
このパターンは、典型的な過学習+偶然の一撃 による錯覚です。
サイン④:「この条件、ちょっと怪しくない?」と思っても、修正が面倒で放置
- 冷静に見ると根拠が薄い条件が混じっている
- でも修正すると過去成績が悪化するので、そのままにしている
これはもう完全に、
「ロジックの正しさ」より「数字の良さ」を優先している状態
です。
過学習を避けるために、具体的にできること
では、どうすれば過学習にハマるリスクを減らせるのか。
いくつか、実務的に使える工夫を書いておきます。
① データを「作る期間」と「試す期間」に分ける
- 例えば、2018〜2021年のデータでロジックを作る
- 2022〜2023年のデータは「一切使わないで」取っておく
- ロジックが固まったら、初めて 2022〜2023年で成績を確認する
これをやると、
「過去にフィットしただけ」か
「未来にもそこそこ通用する」か
がかなりハッキリします。
※機械学習でいう「検証データ」「テストデータ」を自分なりに再現するイメージです。
② 条件の複雑さを“意図的に”制限する
- 条件の数を「◯個まで」と上限を決めておく
- 分岐(例外)ルールも「最大◯個まで」に制限する
- 「1行で説明できないロジックは採用しない」と決める
ロジックが複雑になってきたら、
一度立ち止まって、
「この条件、本当に必要?」
「外したらどれくらい数字が変わる?」
を確認して、“削る側”にも意識を向けることが大事だと思います。
③ 「回収率」だけでなく、「母数」と「勝ち方の質」を見る
検証結果を見るときは、
- 該当レース数(サンプル数)は十分か
- 何で勝っているのか(単発の大穴頼みではないか)
- どの辺にロジックの強みがあるのか、自分の言葉で説明できるか
このあたりをセットでチェックします。
「なぜこのロジックは勝てているのか?」を
未来に向けて説明できないなら、過学習の可能性が高いです。
④ ロジックを頻繁にいじりすぎない
- 負けるたびに条件を変える
- 週単位でロジックが変わっている
こうなると、そもそも 検証が成立しません。
最低でも、
- 「このルールで100レースは打ってみる」
- 「シーズン単位(例:半年)は同じロジックで運用する」
くらいの覚悟で試さないと、
「結果が悪かったのはロジックのせいか?」
「単なるブレだったのか?」
が判別できません。
「プロセスが正しい」という言葉を、免罪符にしない
最後に、この記事のタイトルに戻ります。
「プロセスが正しいと思い込んでいないか?」
この問いは、
- 「プロセスなんてどうでもいい」という意味ではなく
- 「プロセスこそ冷静に検証すべき対象だ」という意味だと思っています。
- 結果だけを追うのは危険
- でも、「プロセス信仰」も同じくらい危険
だからこそ、
「プロセスを信じる」のではなく、
「プロセスを検証し続ける」
姿勢が大事だと思います。
- 過去にピタッと合っているロジックほど疑ってみる
- 母数・期間・勝ち方の中身を一度俯瞰して見る
- 自分の都合のいい「言い訳ロジック」になっていないかチェックする
この地味な作業を繰り返していくことが、
長期目線で見たときの “本物のプロセス精度” に繋がっていくのではないでしょうか。
次にロジック検証をしていて、
「うわ、この条件めちゃくちゃ数字いいじゃん」とニヤけたら、
一回だけでいいので、こう問いかけてみてください。
「これは本当に“強いロジック”なのか?
それとも“過学習しただけの、過去専用ロジック”なのか?」
その一拍の冷静さが、
過学習地獄にハマるか、
再現性のある理論を積み上げていけるかの分かれ目になるはずです。

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